本研究では、戦後大衆音楽文化において放送が果たした構成的な役割について検討した。主要な知見は以下のように要約できる。放送はその草創期以来、レコード産業及び映画産業とは一線を画した「家庭的」な文化を創出し普及しようとしてきた。その理念は、戦後初期には「ホームソング」という言葉で表現され、テレビ放送初期の音楽バラエティ番組が、その普及において非常に重要な役割を果たした。さらに、昭和40年代以降、文化産業の構造変化によって、放送が既存の娯楽産業に対して優位にたつ。その過程で、稚拙さや未熟さを意図的に強調することで「お茶の間」の共感を得ようとする「アイドル」という新たな形態が形成された。
|