2013年度は計画全体の基礎を固めるため、関連する映画作品を幅広く鑑賞するとともに、関連する先行研究を幅広く渉猟した。 同時に、早稲田大学「演劇映像学連携研究拠点」公募研究「上山草人資料を活用した日米露の比較映画史研究」(代表:羽鳥隆英)と連動しつつ、1930・40年代の幕末映画で西洋人役(『唐人お吉』[1931年]米国外交官ハリス役や『鞍馬天狗』[1942年]悪徳商人ヤコブ役)を好演した映画俳優上山草人(1884年‐1954年)を巡る研究を推進した。《唐人お吉》物語は、幕末映画の中でも西洋人の直接的表象の比重が大きい点に特色が認められるため、幕末映画の西洋人に扮した上山の重要性については、今後さらに考察を深めたい。 また、早稲田大学演劇博物館に寄贈された映画女優淡島千景(1924年‐2012年)遺蔵資料のデータベース化を推進した。淡島は1950年代の幕末映画に主演あるいは重要な役柄で助演(『花の生涯』[1953年]村山たか役[NHK大河ドラマ『花の生涯』(1963年)にも同役で出演]や『螢火』[1958年]寺田屋登勢役)した女優であり、映画の幕末=明治維新表象における女性の位置付けを考察する際の重要な存在である。2013年度には、早稲田大学演劇博物館に常設展示《映像》が新設されたため、上述の上山草人の遺蔵資料の紹介とともに、淡島の遺蔵資料のお披露目も実施し、学術的に意義深い展示を開催した。 このほか、幕末映画と密接に関連する股旅映画における女性の位置付けを考察するため、国際会議における研究発表「Hasegawa Shin Series amid the Hegemonic Transition from Cinema to Television」を実施し、様々な示唆を得た。
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