本研究は、日本における音楽芸術団体等への公的支援の実態を調査し、その構造を分析・把握することを目的として、公的機関(文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会)による助成事業の全体像の把握及びその課題について、音楽芸術団体、特にオーケストラの視点から実態分析を進めてきた。研究の最終年度にあたる2015年度は、2013、2014年度に行った調査を補完するため、国内各地においてプロフェッショナル・オーケストラの活動に関する現地調査(公演視察、関係者へのインタビュー等)を行うとともに、これまでに収集したオーケストラの活動や公的支援関係資料に基づく実態分析等を行った。また、本研究の基礎的調査として、文化政策・アートマネジメント関係図書の読み込みを行った。これと並行して、文化政策・アートマネジメント関係学会・会議等に参加し、本研究に関連する最新の研究成果等を把握した一方、研究成果による学会発表(文化経済学会〈日本〉、日本音楽芸術マネジメント学会)及び論文投稿を行った。 研究期間全体を通じた成果として、本研究では、①日本のプロフェッショナル・オーケストラに対する財政支援の構造把握、②オーケストラの「地方公演」の実態把握、③オーケストラの「地方公演」の課題分析を行い、学会誌等に論文が掲載された。文化芸術活動に対する公的支援は、第4次「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(2015年5月22日閣議決定)において「文化芸術活動に対する効果的な支援」が重点施策のひとつに挙げられていることに見られるように、国の文化政策における重要な課題とされている。本研究は、これに資する新たな視点を提供するものとして意義を持つと考えられる。
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