研究課題/領域番号 |
25770073
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
仁平 政人 弘前大学, 教育学部, 講師 (20547393)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 日本近代文学 / モダニズム / 伝統の創造 |
研究実績の概要 |
・日本比較文学会東北支部第12回比較文学研究会(仙台市戦災復興記念館、2014年7月26日)で、「「翻訳」と(しての)モダニズム―「新感覚派論争」再考―」と題して研究発表を行った。この発表では、「新感覚派」がポール・モーラン『夜ひらく』翻訳の影響で成立したという定説を、同時代言説の調査・分析を通して批判し、一九二〇年代のモダニズム文学をめぐる言説空間の捉え直しを行った。この発表は、日本モダニズムの言説を「超近代主義」・「東洋主義」に結びつく方向も含む多面的なものであったことを明らかにするものであり、本研究の重要な成果と位置づけられる。
・国際シンポジウム「川端康成21世紀再読―モダニズム、ジャポニズム、神話を超えて―(Relire Kawabata au 21e siecle ― modernisme et japonisme au-dela des mythes)」(フランス、パリ・ディドロ大学、2014年9月18日)で、「川端康成における心霊学とモダニズム(Spiritisme et modernisme chez Kawabata)」と題して研究発表を行った。この発表では、川端康成における心霊学の受容を、同時代のモダニズムの文脈から捉え直し、そのありようについて多面的に再検討を行った。この発表は、日本モダニズムの特徴を従来と異なる見地から再考するものであり、本研究の成果と位置づけられる。
・川端康成学会第164回例会(創価大学、2014年12月20日)で、「初期川端文学における「科学」と身体の想像力」と題して研究発表を行った。この発表では、川端康成の「東洋的」と見なされてきた世界観が、同時代のポピュラーサイエンスの文脈と深く結びつくものであることを明らかにし、その意義を再検討した。この発表は、モダニズムと「東洋」言説との関連を明らかにするものであり、本研究の成果と位置づけられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本近代文学館や国立国会図書館での調査を中心として、1920年代のモダニズム文学に関係する主要同人誌の調査を行い、一般の文芸雑誌や地方雑誌、新聞記事の調査にも取りかかっている。同時に、モダニズム文学言説の主要な担い手となった作家・批評家の著作についても、順次検討を進めている。また、調査結果を踏まえて、日本モダニズム文学と「東洋」「伝統」言説との関連について多角的に考察を行い、その成果を論文や研究発表で公開している(研究発表「「翻訳」と(しての)モダニズム―「新感覚派論争」再考―」など)。以上のように、ここまでは当初の計画通り研究を進め、一定の成果を上げていると考える。 ただし、調査の結果、関連する言説が当初の見通しよりも多様な文脈に散在していることが明らかになりつつあり、研究成果をより生産的にするためにも、象徴主義とのつながりや表現主義など、いくつかの論点に絞ってより集中的な調査・検討を今後行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの作業を継続して、モダニズム文学に関連して「東洋」・「伝統」に関わる文脈が価値付けられている事例を収集し、一覧を作成する。平成27年度は、これまで検討対象としていなかった「象徴主義」とモダニズムとの関連も視野に入れるとともに、特に主要文芸雑誌や新聞、地方で刊行されていた同人誌、モダニズム的な文学者の言説を、広く調査対象とする。その上で、収集された言説について、他の諸領域との関わりを視野に入れながら、その論理について個別的な分析を行う。分析の成果は、学会における研究発表及び学術論文を通じて公表する。 その上で、3年間の研究成果を踏まえ、1920年代のモダニズム文学における「東洋」・「伝統」言説のあり方について、複数の見地から考察を行い、成果を発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予算は計画に従って概ね使用したものの、調査やモダニズム関連資料購入の余りとして、資料購入には足りない程度の若干の金額が残った。
|
次年度使用額の使用計画 |
資料(モダニズム文学関連の古書類)の購入経費に追加して、使用することとしたい。
|