・第4回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム(中国、延辺大学、2015年8月17~19日)で、「モダニズムとしての〈東洋〉―初期川端康成を手がかりに―」と題して研究発表を行った。この発表では川端康成のドイツ表現主義の受容について、大正期の「南画」をめぐる言説との関係を中心として検討するとともに、以降の川端の「東洋(日本)主義」的言説への連続性について再考を行った。この発表は日本のモダニズム文学と東洋美術をめぐる言説との関係性について解明するという点で、本研究の成果と位置づけられる。なお、同内容に基づく論文「モダニズムとしての〈東洋〉―初期川端康成における「表現主義」受容と大正期美術言説との交通をめぐって―」は、『日本語言文化研究』第4輯(印刷中)に掲載が決定している。
・『弘前大学国語国文学』第37号(2016年3月)に論文「「新感覚派論争」を読み直す―『夜ひらく』評価とモダニズムの複数性―」を発表した。同論文は1920年代の「新感覚派論争」について、特にポール・モーラン『夜ひらく』をめぐる論争の局面に焦点を当てて分析し、「新感覚派」をめぐる旧来の定説を批判し、当時のモダニズム文学をめぐる言説空間について問い直しを行った。本論は、日本モダニズムを「潮近代主義」・「東洋主義」に結びつく方向を含む多面的なものであったことを明らかにするものであり、本研究の重要な成果と位置づけられる。
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