本研究は、中世から近代までの古典注釈学および和歌の実態とその変遷を調査・分析し、賀茂真淵を中心とする近世国学者の古典注釈学と和歌の意義を新たに捉え直すことを目的とする。その2年次にあたる今年度は基礎研究を進展させるとともに、古典学の通史的把握を目指し、以下の研究を行った。 1、近世前期の貞徳・季吟から中期の真淵にいたる伊勢物語注釈の特質とその変遷について調査・分析を進めた。うち北村季吟の『伊勢物語拾穂抄』を対象に、中世勢語学と近世のそれの違い、写本と板本の違いを検討した成果について、「季吟の古典注釈学―『伊勢物語拾穂抄』の注釈方法をめぐって―」と題し学会発表を行った。 2、賀茂真淵・上田秋成・本居宣長における神道学の影響について調査・検討を行い、うち秋成と宣長の天照大神に関する評価について、論文「宣長・秋成「日の神」論争」として発表した。宣長の天照大神観は同時代の神道学において全く奇妙なものとは言えず、しかし自身の思想の根源をなすものであったがゆえに、それに異を唱える秋成を激しく攻撃したことを述べた。 3、今年度までに得られた知見をもとに、旧稿に加筆・修正を行い、『賀茂真淵の研究』と題した著書を執筆した。本書は次年度に公刊する予定である。 そのほか、近世画賛研究に関して「書評 田代一葉著『近世和歌画賛の研究』」(『国語と国文学』91巻9号、2014年9月)、宣長研究に関して「書評 田中康二著『本居宣長―文学と思想の巨人―』」(『日本文学』64巻6号、2015年6月掲載予定)を執筆した。
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