研究課題/領域番号 |
25770080
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
望月 和歌子(宮本和歌子) 京都光華女子大学, キャリア形成学部, 講師 (60638196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本近代文学 |
研究実績の概要 |
大正末期から昭和中期にかけて、広く大衆に愛好された江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズは、彼が創作した有名なキャラクターである明智小五郎と怪人二十面相が、知恵や変装の技術を駆使し、互いを出し抜こうとする様が繰り返し書かれている。甲乙付けがたい才能の持ち主同志の対決であるが、これは、彼が成人向け作品において、一貫して書き続けてきたテーマとも共通する要素である。 具体的にどのような点が、成人向け作品で描かれてきた一連の内容と共通するのかを明らかにすることで、多様な読者層に対応すべく工夫を凝らして発表された江戸川乱歩の諸作品の根底には、作家個人の嗜好が色濃く反映されていることが証明できる。さらに、強い人気を誇った作品が、前時代のどのような文化から影響を受けているかを解明することで、昭和初期、中期の日本人にとって、どのようなものが娯楽として成立していたかを垣間見ることができる。このようにして判明した6、70年前の日本人にとっての娯楽の一形態から、第二次世界大戦前後で大きく変化したのかを考察することで、敗戦によってもたらされた生活スタイルの変化は、日本人の思考や感性も変化させたのか、一つの見解が見いだせる。 現代でも、オマージュのような形式で、江戸川乱歩の作品に登場する人物の名や団体の名を用い、新たに漫画などを発表する例も多々あるが、こうして現代まで受け継がれるに足る要素を、発表当時より巧みに作品内に取り入れていたといえる。そして、このことは、大衆が娯楽として受け入れるものの本質は、安易に変容するものではないことがわかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
年度末の締切時期までに、採用される価値のある論文として完成できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
7月までに論文として完成させ、9月の締切までに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H.G.ウエルズ全集購入のため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文執筆に要する資料の複写、収集はほぼ完了しているので、完成を第一に目指す。
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