研究課題/領域番号 |
25770082
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
門脇 大 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (30634133)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 怪異 / 化物 / 海坊主 / 新井白石 / 平田篤胤 / 心学 / 近世通俗仏教 / 井上円了 |
研究実績の概要 |
2015年度は、本研究の主目的である「近世期における怪異観の実態」の解明に関して、以下の研究を行った。発表が決定しているものと、未定のものとに分けて記す。 <発表が決定しているもの> 「海の化物、海坊主―化物の変遷をたどる―」(鈴木健一編『海の文学史』、三弥井書店、2016年刊行予定)。本論考では、海の化物である「海坊主」を取り上げて、近世初期から明治・大正期に至る化物の変遷を検討した。海坊主がはっきりと文献に現れるのは近世初期であり、複数のイメージの変遷を経て現代まで記録・伝承されている。先行研究を踏まえて、海坊主が記された文献と、口碑伝承を網羅的に収集・整理して、検討した。さらに、それらが近世文芸の世界へ流入してゆく様相を具体的に検討した。時代とジャンルを超えて検討することにより、従来の研究では見えにくかった、怪異観の変遷の一端を明らかにした。また、この手法を応用して、別の事例を検証してゆく可能性を見出した。 <未定のもの> 来年度以降に発表する研究に関して、資料の収集と整理、先行研究の検討を行った。主に以下の4点である。1.新井白石と平田篤胤の「鬼神」・「幽冥」・「天狗」に関する資料収集・整理。2.心学を中心とした通俗教訓書の資料収集・整理。3.近世通俗仏教に関する先行研究・資料の収集・整理。4.井上円了の妖怪研究に関する資料、および幕末・明治期の関連資料の収集・整理。 以上の4点の基礎研究を行った。これらは昨年度以前から行っている研究を継続・発展したものであり、一定の水準に達したと考えられる。来年度以降は、これらの基礎研究を元とした研究成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は、「9.研究実績の概要」に記した論文を作成した。これは当初の研究計画には無かったものであるが、研究が進捗するうちに見出されたテーマに関するものである。本研究の中心テーマである「近世期の怪異観」の変遷を検討したものであり、この検討によって見出された知見、研究手法は今後に活かすことができるものである。このことから、従来の研究計画よりもより層の厚い研究となったといえる。 しかし、研究計画としていた他分野(国学、仏教、明治期の怪異観)に関する研究は、資料の収集・整理といった基礎研究に終始した。複数分野を対象として、それら相互の関連性をも含めた研究を目指しているために、基礎研究の占める割合が大きくなってしまったことが原因と考えられる。これらに関しては、その成果を来年度以降に発表する予定である。 以上のことから、研究の進捗状況はやや遅れていると判断できる。しかし、基礎研究を十分に行うことができたため、その遅れは取り戻すことができると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の「研究の目的」・「研究実施計画」に従って研究を進める予定である。ただし、それらと密接な関係を持ちながら、新たに見出されたテーマ・資料もある。新たな研究課題として取り入れてゆく予定である。 また、「11.現在までの進捗状況」にも記したように、当初の予定からは発表が遅れている課題がある。それらは、これまでに行った基礎研究を元にして、順次発表してゆく予定である。
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