本研究の目的は、明治時代に刊行された営業案内本・職業案内本に収録されている書物関係職の紹介記事を、出版史料としての有効性という視座から検討したものである。案内本は、デジタル公開されている国立国会図書館所蔵本を中心に分析を行った。その結果、(1)数値や具体例の出典が不明というデータソースの不透明性は資料的価値を損ないはするが、(2)一次資料や二次資料からは知りえない現場の状況が記録されてもおり、その点において営業案内本・職業案内本を出版史料として利用する価値はあること、(3)また、当時の人びとの心性が、立身出世や独立自営などの用語を通して言説に反映されていることを明らかにした。
|