本研究計画は、戦前の総合雑誌『改造』が昭和初期から企画した〈文学懸賞〉である『改造』懸賞創作が、日本の近代文学の展開に与えた影響と意義について調査・分析したものである。有名雑誌の『改造』が新人の純文学テクストを定期的に募集し、それを誌上に掲載したことは、日本の〈文壇〉を大きく変容させた。一方で、授賞作家たちは〈懸賞作家〉と呼ばれ、コネクションや閥の力が強い〈文壇〉の中で活動するための十分な環境を得られず、数作で消えていったり、戦争協力に積極的になる者も多かった。本計画を通して、現在の〈文学賞〉中心の日本近現代文学の状況を、『改造』懸賞創作の生滅が象徴していることを示した。
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