研究課題/領域番号 |
25770097
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
金子 貴昭 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (20411150)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 板木 / 版木 / 出版記録 / デジタルアーカイブ / 近世出版 |
研究概要 |
(1)当年度は、佛光寺が所蔵する板木についてデジタルアーカイブ構築(クリーニング・採寸・計測・デジタル撮影・画像処理)に取り組んだ。結果、当年度は板木約700枚(約15,000カット)のデジタル化を行った。これらは次年度、申請者が構築を進めているwebデータベース「板木閲覧システム」に登録し、書誌情報の蓄積を進めることになる。これらの板木と(2)に述べる『京都書籍出版文書』とを照合し、佛光寺所蔵板木の伝来経緯について考察を進めた。板木デジタルアーカイブと同時に、板木に対応する板本の調査・収集を行い、それらのデジタルアーカイブ構築を行った。これらを立命館大学アート・リサーチセンターが運営する「書籍閲覧システム」に登録した上で板木閲覧システムと連動させ、公開を進めた。これらにより申請者が構築する「板木閲覧システム」の収録件数は17,200件(非公開を含む)に増加した他、メタデータを充実させることができた。 (2)出版記録のテキストデータアーカイブ構築 当年度は、京都書林仲間記録「京都書林行事上組済帳標目」「京都書林行事上組重板類板出入済帳」、大阪本屋仲間記録「出勤帳」「裁配帳」「差定帳」「鑒定録」のテキストデータアーカイブの構築を進めた。研究計画にあげた『京都書籍出版文書』の共同翻刻は行わなかったが、画像処理までを終えている。代替計画として、個人所蔵出版記録の共同翻刻と読解を月例の研究会形式で進め、翻刻データの集積を進めた。 (3) (1)および(2)の活動を通じて、共著書1件、論文1件、口頭発表4件の成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、研究計画に記載した板木コレクションのデジタル化は実施せず、別のコレクションについて実施することとなった。結果としてデジタル画像数は当初予定数を下回ったが、これは次年度以降の工程を見据え、採寸やクリーニング等の付随作業を先行して進めた結果であり、比較的順調に進捗したと評価して良いと考える。 一方、出版記録のテキストデータアーカイブについては、校正にやや遅れが見られるものの、比較的順調に進んでおり、これをベースとした研究成果の発表も行った。研究計画にあげた『京都書籍出版文書』の翻刻は行わなかったが、これに変えて個人所蔵資料の翻刻を協力者と進めるなど研究計画に変更は生じたが、順調に進捗したと評価している。 したがって課題全体としては、概ね当初計画どおりに進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度における推進方策は以下の通りである。 (1)板木デジタルアーカイブの効率化について、平成25年度中に導入した機器(デジタルノギス等)が功を奏したことから、平成26年度以降はこれらの機器をフル活用することにより、進捗が加速することが期待できる。ただし板木クリーニング用の機器に不具合が起きていることから、一連の工程が停滞しないように機器の更新などの方策を検討する必要がある。また平成25年度と同様、機会を捉えて研究計画に記した以外の板木コレクションのデジタルアーカイブ構築にも取り組んでいく。 (2)出版記録のテキストデータアーカイブについては、活字資料を対象とした過年度の構築は比較的順調に推移しているものの、くずし字読解を伴う構築作業は人材不足の状態である。構成員や協力者を増やす措置を講じ、進捗を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は225,780円の残額が発生しているが、このうち147,390円は2014年3月度のアルバイト謝金や交通費の支払い処理が2014年4月以降となるために発生したものであり、実質的には次年度へ繰り越すものではない。これを除く78,390円は、3月の作業において感染症による作業者の欠員が出たこと、謝金を必要としない作業者2名(交通費のみ支給)の協力を得たことにより、3月度の人件費が見込みを下回ったために発生した残額である。 平成26年度は、(1)板木デジタルアーカイブ構築および板木に対応する板本の調査および収集、(2)出版記録テキストデータアーカイブ、(3)(2)をもとにした出版記録データベースの構築、(4)未入手の出版記録についてのデジタル撮影または複写請求に対して研究費を使用する。平成25年度に発生した残額は、平成26年度の研究費と合わせて(1)および(2)に関わる人件費に使用する計画である。
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