研究課題/領域番号 |
25770098
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
日沖 敦子 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (30448708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 浄土教絵画 / 絵巻 / 掛幅絵 / 絵本 / 説話 / お伽草子 / 寺社縁起 / 袋中 |
研究実績の概要 |
本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の形態を明らかにすることを目的とする。特に、これまで行ってきた檀王法林寺及び西寿寺所蔵の掛幅絵の調査・研究を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理と分類を進め、制作背景及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討し、民衆信仰の実態解明を目指す。 今年度は、西寿寺所蔵「当麻寺供養図」の軸木から新たに確認できた内蔵品を調べ、その結果をまとめた論考を発表した(『アジア遊学』174号)。軸木からは袋中自筆の名号50枚と願文が確認できた。このほか檀王法林寺所蔵「八相涅槃図」の軸木からも内蔵品が確認されており、これらの内蔵品の発見により、檀信徒によりこれらの絵画が寺に奉納される以前、既に制作段階で袋中の関与があったことが明らかとなった。袋中に帰依する信仰集団がどのように形成されていったのか、またどのようにこれらの絵画が制作され、奉納されたのか、内蔵品から徐々に浮かびあがりつつある。 このほか今年度発表したものとして、新出のお伽草子絵巻として堀家所蔵『玉ものまへ』全翻刻がある(『人文学部紀要』35号)。この絵巻は、江戸時代中期制作と推定できる絵巻である。本文と挿絵の検討により、現在所在不明の矢野氏旧蔵絵巻と極めて一致度が高く、筆跡も同筆と判断できる絵巻であることが判明した。堀家所蔵絵巻の出現によって、複数の『玉ものまへ』絵巻が同様に書写されていたことが具体的に明らかとなった。堀家所蔵絵巻は、矢野氏旧蔵絵巻の詳細を推察する手掛かりとなる貴重な絵巻であると位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、閲覧許可が難航するなどの理由により、計画がやや遅れていたが、今年度は調べを軌道に乗せ、研究ペースを取り戻しつつある。追って研究成果を公開していけるよう、努力していく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度調べを進めた西寿寺蔵「二河白道図」や檀王法林寺蔵「涅槃図」の検討に加え、関連する絵画資料、文献資料について精査し、発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、資料の閲覧許可を得るのが難しく、当初予定していたよりも調査に出かけられる回数が減ったことにより、次年度使用額が生じた。その費用の繰り越しにより、今年度も次年度使用額が生じる結果となった。繰り越しとなった使用額は、今後の調査・研究に充てさせていただく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、本来遂行する予定だった昨年度分の調査を進めていく予定であり、そのための費用として充てさせていただく予定である。具体的には、関西圏を中心とした袋中関連寺院の調査を初め、各大学・諸機関所蔵の関連史料の調査、学会・研究会での発表に充てさせていただく予定である。
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