本研究全体の意義は、手稿本に現れる王党派のマイナーな作品群も議論の俎上に載せることで、十七世紀のイエス生誕詩は政治性を強く帯びた文学テーマであることを議論したことにある。王党派の作家たちは、内乱期と王政復古に至るまで、内乱期以前に用いられた文学的イメージを繰り返し用いながら王の帰還を願い、王政復古を言祝いでいたことを指摘した。 前年度の研究成果をふまえ、最終年度に得られた研究実績は以下の3点である。まず、前年度に十七世紀英文学会東京支部で行った口頭発表、「王党派の詩と内乱期の祝祭―Martin Lluelynを中心に」をもとに、「国王の像とイエス生誕詩―1630年から王政復古まで―」の論考を執筆した。本論文は、2015年5月に刊行予定の論集『十七世紀英文学を歴史的に読む』(金星堂)に掲載されることが決まっている。2点目は、2013年12月7日、日本ミルトン協会のシンポジウムで行った口頭発表をもとに、「「偉大な監督者」ヤングとミルトン」を執筆したことである。本論文の加筆と修正に際して、本研究課題遂行のために収集した資料を活用した。特に、データベースEarly English Books Onlineを通じて得られた十七世紀のクリスマスを含む祝祭日を主題にした歴史資料を参照し、イエス生誕詩のテーマであるクリスマスを、ピューリタンが問題視した祝祭日の堕落とともに議論する必要性に言及した。最後に、2015年2月28日に行ったオベロン会での研究発表を通じて、詩人ジョン・ミルトンが晩年の作品である『失楽園』と『闘士サムソン』の中で、王党派が国王賛美のために用いたイメージをどのように反駁していたのかを検討した。 研究期間全体を通じて、Early English Books Onlineの活用と大英図書館での手稿本の参照により、研究内容を進展させることができた。
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