研究課題
若手研究(B)
本プロジェクトの初年度に当たる平成25年度は、これまでの研究をさらに深め、次の段階へと進める準備期間として設定し、概ね計画当初の目的を達成できたと考えられる。具体的な実績としては、平成20年に完成させた博士論文の内容を拡充すると同時に、博士論文提出以降の研究経過をも含めた内容を、新潟大学大学院現代社会文化研究科発行Niigata University Scholars Seriesの一冊 (The German Code in Thackeray's Major Works: ISBN 978-4-902140-14-9)として完成させたことが挙げられる。この研究書を作成する過程では、それぞれのChapterについて再度読み直しと部分的修正が行われ、Introductionを新たに書き直すとともに、Chapter 3の論文に至っては全面的な再考と修正が行われた。研究対象であるイギリスの文筆家W.M.Thackerayが著したテクストの量は膨大であり、依然としてその全てを網羅的に精査するには多くの時間と労力が必要であるが、19世紀半ばのイギリス国民の目に比較的よく触れた(長編)小説については、ある程度ドイツ文化流入の影響を読み取り、明らかにすることができたと考えられる。また、今年度は本研究を次の段階へと進めるために、研究テーマに必要な関連書籍・資料を調査し、購入・入手した。これらの資料を精査する時間は、初年度となる今年には残されていなかったが、計画していた通り2年目以降の研究の準備が整いつつあると言える。
2: おおむね順調に進展している
計画初年度となる平成25年度の研究は、博士論文をも含んだこれまでの研究を拡充させ、次の段階へと発展させるための準備ができたという点において概ね順調に進んでいると考えられる。これらの活動内容は、一つの研究書(The German Code in Thackeray's Major Works: ISBN 978-4-902140-14-9)の完成と入手した研究資料として形に残すことができた。いずれも当初計画していた活動であり、それらが達成できたことを、翌年度以降の研究の糧にしていきたい。
今後の研究推進方策としては、研究対象をイギリスの文筆家W.M.Thackerayの小説のみに限定せず、当時大量に出版されていた定期刊行物にみられる彼のテクストを精査し、庶民的なレベルでのドイツ文化の流入実態をさらに究明することである。また、Thackerayを足掛かりに、イギリスの大衆文化に大きな影響を与えたドイツ人劇作家August von Kotzebue(1761-1819)やE.T.A.Hoffman(1776-1822)の著作物にも研究対象を少しずつ広げる予定である。また当該分野の国際学会にも参加し、最新の研究動向にも目を配りながら自身の研究の意義や目的を再確認していくことが必要であると考える。
当初予定していた文献資料収集と国際学会参加のための海外出張が、今年度は様々なスケジュールとの組み合わせの都合により現実的に不可能となってしまい、旅費の予算が予定を大幅に下回ることとなってしまったため。研究計画に組み込んでいた海外での文献調査と国際学会への参加を確実に行うと共に、予定に組み入れたにもかかわらず参加できなかった日本国内の学会にも参加する旅費の補助としての使用を検討したい。
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