研究課題/領域番号 |
25770105
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
市橋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70613397)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イギリス文学・文化 / 19世紀 / ヴィクトリア朝時代 / ドイツ文学・文化 / ゲルマニズム |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀中頃のイギリス大衆文化に浸透したドイツ文化の影響を、特に文芸文化に焦点を当てながら調査し、考察を進めている。今年度は、本研究テーマにおいて最も重要だと考えられる18世紀のドイツ人劇作家August Von Kotzebue (1761-1819)の作品と関連資料をさらに深く読み進め、文献調査より明らかとなった事柄をまとめ上げる準備を整えることができた。Kotzebueの劇作がほぼ同時代以降のイギリスで翻案されると、優れた題材や劇作家が乏しかった18世紀末から19世紀初頭のイギリス演劇界に、間に合わせ的な形で輸入され、多大な「悪」影響を与えたことは昨年度までに確認できたところである。これらの作品のうち、Das Kind der Liebe(1791)やMenschenhass und Reue(1789)という劇作が、イギリスの小説家Jane Austen(1775-1817)のMansfield Park(1814)や、W.M.Thackeray(1811-1863)のThe History of Pendennis(1848-1850)といった小説内で、伏線として重要な意味をもつ物語として採り入れられていることは既に読み解いたところである。本年度はこれらに加え、次の2点を新たに知ることができ、研究の幅を広げることができた。一つ目は、Jane Austenが観劇したKotzebueの翻案劇にはThe Birthday(原題: Die Versoehnung<1798>)も含まれ、Austenの有名な小説Emma(1815)の登場人物やプロットにも影響を与えているということである。2つ目は、近年では、こうした文化的交流を肯定的に捉え、Kotzebue作品が世界に知れ渡った契機として、上述したイギリス人小説家たちの知的活動が見直されているということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では3年目以降は、イギリスの大衆文化に影響を与えたもう一人のドイツ人作家E.T.A.ホフマンの研究に取り掛かる予定であったが、一人目の劇作家August von Kotzebueの文献資料が膨大な量であることが分かり、文献調査に予定していたよりもかなりの時間がかかってしまっている。膨大な量の文献資料は、けっしておろそかにはできず、慎重かつ緻密で丁寧な研究を進めるにはやむを得ない部分もあると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、焦点を絞ることが挙げられる。計画段階では、思慮が浅く、複数のドイツ人作家について調査を進めることができると考えていたが、一人のドイツ人劇作家が19世紀イギリスの大衆文化に及ぼした影響は想像以上に大きく、正直驚いているところである。これは、視点を変えれば、この劇作家Kotzebueがいかに重要な人物であるかを暗示しており、彼に焦点を当てて、しっかりと調査を重ねていく方が堅実な成果が得られると考えているところである。
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