研究課題/領域番号 |
25770105
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
市橋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70613397)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | イギリス文学 / 19世紀 / ヴィクトリア朝時代 / ドイツ文学・文化 / ゲルマニズム / コッツェブー |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀中頃のイギリス大衆文化に浸透していたドイツ文化の影響を解き明かすことを目的としている。当初の計画において、本年度は研究結果を取りまとめる最終年度となる予定であったが、昨年度までに焦点を絞り、収集されたドイツ人劇作家August von Kotzebueに関する資料の調査が、公私にわたる様々な要因で遅れてしまい、研究計画の見直しと延長を行ったところである。 本年度、文献資料の調査には精力的に取り組むことができたものの、1つの具体的な成果に取りまとめることができなかったことを猛省している次第である。1年の延長期間となった今年度は、これまでの調査で明らかになったことを1つの論文として取りまとめるべく鋭意取り組み中である。なお、現在執筆中の論文は来年度内に刊行予定である『新・阪大英文学会叢書(若手編)』第1号に投稿すべく申し込みをするところである。 今年度新たに解き明かされたことは、研究課題の根本的な問題にかかわることである。つまり、Kotzebueの演劇作品が、最初18世紀後半から19世紀初頭にかけてのドイツ本国で大衆文化に広く浸透していった理由と経緯についてである。ドイツ啓蒙主義が知識人たちの間で声高に叫ばれていた一方、大衆の娯楽を目的としたKotzebueの演劇作品は、多くの劇場で観客を楽しませていたにもかかわらず、崇高で普遍的な芸術性を欠くという理由から正当に評価されなかっただけでなく、批判的・否定的に捉えられることが多かった。このことは彼の演劇が翻案としてイギリスに大量に流入し、当時の劇場経営に大きく貢献していた一方で、W. Wordsworthらイギリスの知識人から厳しい非難を受けていたことと合致するのである。本研究では、こうした当時の時代思潮を十分に考慮した上で、Kotzebue演劇の再評価を詳細なテクスト分析に基づいて解き明かしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、本年度を最終年度としていたが、膨大な文献資料の調査に予想以上の時間がかかっており、研究成果を取りまとめる時期にまで食い込んでしまっている状態である。こうした研究それ自体の要因に加え、大学教員としての職務が大幅に増大し、カリキュラム等の変更に伴う校務が、研究に使用できるはずであった時間を大きく費やしていることが挙げられる。また、私的な生活面においても特別な出来事や事態が次々と生じてしまい、研究計画をたてた時点での生活状況が一変していることが進捗を遅らせている原因となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、研究課題の絞り込みを行い、焦点を明確にすることによって文献資料の調査をできるだけ速やかに収束させるとともに、論文執筆に作業を集中させていくことにより、研究成果をとりまとめる時間を可能な限り確保していくことが挙げられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度内に購入を慎重に検討する文献資料が数点あったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究成果のとりまとめに際し生じてくる必要な文献資料の購入に充てる計画である。
|