本研究は、19世紀中頃の英国に見られたドイツ文化の流入と再評価の動き<ゲルマニズム>を主に一般的な文化レベルで調査し、当時著しい発展を遂げていた英国小説への影響を解き明かしている。本研究は2つの段階から成り、第1段階ではW.M.サッカレーの主要小説内に言及されるドイツ関連の事物が当時の読者にいかなる形で異文化導入の機会となりえていたかを明らかにした。第2段階は18世紀末から19世紀初頭にかけて英国で流行したドイツ人劇作家コツェブーの翻案劇を調査し、英国人作家たちがこの翻案劇を酷評した様々な事情がいかにドイツ文化全般に対する不当な評価へとつながり、その後の再評価を引き起こしたのかを考察した。
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