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2014 年度 実施状況報告書

17世紀イギリス劇作出版における文学編集確立の歴史

研究課題

研究課題/領域番号 25770107
研究機関九州工業大学

研究代表者

長瀬 真理子  九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (80636506)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード書誌学本文研究 / 無記名印刷物の印刷者同定 / ウィリアム・ウィルソン / 17世紀イギリス劇作編集 / 印刷出版業者ネットワーク
研究実績の概要

26年度は、ジョン・ウェブスターおよびジョン・マーストンの劇作を中心に読本編集の発展について調査することにしていたが、次の理由により計画を変更した。ウェブスターおよびマーストンの劇作版本を調査したところ、記名されている出版社と印刷者が多種多様であるため、読本編集に貢献した人物を特定することが極めて難しい。また、これまでの研究で、組織的に劇作編集を行っていたことがわかっている、ヘンリー・へリングマンを中心とする編集者および印刷者、作家による文学同人グループの目立った関与も認められなかった。
このため、劇作本の出版に関わった出版者および印刷者のネットワークに焦点を当てた調査に立ち返ることとした。研究調査内容は以下の通りである。
25年度から継続中であった印刷者ウィリアム・ウィルソンの無記名印刷物に関して、印刷者同定が可能である版本が5作品にまで増加したため、長期休暇を利用して、主に大英図書館で欠損活字と使用された紙の調査を行った。結果、全作品についてウィルソンの関与を示す確証が得られたため、本調査結果を国際誌へ投稿予定の論文に含めることとした。本論文は昨年度中に投稿する計画であったが、同定対象の版本が増えたことで、証拠の収集に時間を要したことと、それぞれの版本につき共同印刷社の有無についても調査する必要があったため、現在も執筆継続中である。現在までに上記5作品に関する調査は完了した。ウィルソンの無記名印刷本はその大半がヘンリー・へリングマンによって出版されていることから、昨年度継続して行った印刷者同定の研究は、ウィルソンがへリングマンの出版グループの中核にいたことを証明する材料にもなる。このへリングマンのグループの中で行われていた編集作業の分担についても今後の重要な研究課題のうちの一つである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在も執筆継続中の論文は昨年度投稿予定であった。遅延している理由は、ウィリアム・ウィルソンの無記名印刷物に関して、印刷者の同定が可能な作品数が増え、その分調査に時間を要したことによる。ウィルソンは1630年代後半から国王空位期間を経て王政復古期にいたるまで、英国印刷出版業界の中核にいながら、その業績に関する研究が極めて少ない人物でもあるため、論文発表を遅らせても、彼の携わった仕事の全容に近付くため、できる限り多くの無記名印刷本特定に取り組む必要があった。

今後の研究の推進方策

研究実績の概要、および現在までの達成度で記したように、想定外の研究成果は得られているものの、研究計画書の計画通りに研究が進んでいるわけではない。計画書の作家の枠に縛られてしまうと、本来見るべき劇作編集の過程を追えない可能性もあるため、研究対象とする作品や作家については臨機応変に扱うこととしたい。また、本研究ではイギリス劇作編集の発達過程について明らかにすることを目指しているが、印刷出版業者のネットワークを軸とした調査には劇作以外の版本が必然的に含まれる。劇作版本の一元的な調査に留まらず、当時劇作出版に関わった印刷出版業者の仕事の大枠をコンテクストとして劇作編集の発達にアプローチする方針である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度末、イギリスの大英図書館およびバーミンガム大学カドベリー・リサーチ・ライブラリーに注文した古版本複写の納品が年度をまたいでしまった。また、昨年度予定していた論文の投稿が遅れたため上記複写の出版許可料および投稿費の支払い分が未使用のまま残ってしまった。

次年度使用額の使用計画

理由欄に記入した古版本複写料、出版許可料、および論文の投稿費の充てる計画である。

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公開日: 2016-06-01  

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