27年度は本研究の最終年度として、過去3年間の研究の総括と28年度以降の研究準備を中心に行った。まず、5月に九州アメリカ文学会第61回大会(於鹿児島大学)で「アメリカ南部と白人性」という題目のシンポジウムを主催した。本シンポジウムでは、近年における南部研究のパラダイムシフトを意識しつつ、人種的構築としての白人性から映し出される南部像について、私を含めて4名による研究発表を通して考察を試みた。私の発表では、William FaulknerのIntruder in the Dust(1948)における白人少年Chick Mallisonの自己意識について、南部の歴史的連続性とアメリカの同時代性のコンテクストの中でいかに構築されるのかを考察した。発表の内容については文献の裏付けや論理を補強しつつ英語の論文にまとめる予定であり、現在その準備中である。 また、Faulknerが人種に関する発言を繰り返すようになった1950年代における黒人作家や知識人との影響関係について、特にJames Baldwinとの関連性を探った。北部出身のBadlwinが南部白人性について作品の中でいかに表象しようとしたのかを考察し、この成果は28年度に国際学会での発表を行う予定である。
|