研究実績の概要 |
本年度中に出版された研究成果により、英米間の国際著作権法環境下での上演権の歴史的な成立過程が明らかになった(Derek Miller著 Copyright and the Value of Performance 1770-1911, CUP, 2018年)。しかしながら、上述のMillerの著作権法制度史において、当時の法環境において演劇出版社の役割は、明らかではない。 本年度は、英米両国の法律を活用した演劇出版社サミュエル・フレンチ社が19世紀後半の英米国の法制度の改革に合わせ、演劇の2つの法的保護(上演権と出版権)を変容しつつあった法環境に応じて巧みに利用しつつ活動を行ったことを訴訟例から実証した。また、著作権の揺籃期であった19世紀に散見されるテクストの無断転用や2次利用に関して、デリダの発話行為(スピーチ・アクト)実践のモデルを理解の一助とすることを提案した。以上の研究成果をカナダで開催された19世紀の英国大衆雑誌についての国際学会において発表した。 また、該当劇作家による小説家の作品の転用の事例に関する研究成果の一部を、学術図書として出版したほか、関連学会のシンポジウムで研究成果を広く発信した。
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