研究課題/領域番号 |
25770111
|
研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
松永 京子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50612529)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 核文学 / 原爆文学 / 先住民文学 |
研究実績の概要 |
本年度は、26年度に行ったレスリー・マーモン・シルコーとマリルー・アウィアクタ作品研究に引き続き、北米先住民作家による核のナラティヴの検証を行い、その一部を論文として発表した。また、昨年度と同様、ポストコロニアル理論やエコクリティシズムの観点といった、これまでアメリカ核文学研究において見過ごされがちであったテーマや視点を明らかにするために、ポール・ブライアンやハンス・G・グラッツァー/ラリー・M・ブラウニングによる先行研究を参考に、既存の北米アメリカ核文学をテーマごと(終末的想像力、核の不安、核戦略関連など)に分類・分類する作業を行った。この過程において、ハワイ出身の日系作家ジュリエット・S・コウノの原爆をテーマとした小説 Anshu(2010)や、3.11以降のトランスパシフィックな環境問題に注目したルース・L・オゼキの小説『あるときの物語』(A Tale for the Time Being, 2013)など、日系アメリカ人作家による核・原爆表象を検証することの重要性を確認した。この研究の成果は、Asian American Literature Association の国際シンポジウムや Western Literature Association 学会で発表し、最終的に論文としてまとめたものを学会誌などに発表している。さらに、26年度は、W・E・Bデュボイス、ラングストン・ヒューズ、ゾラ・ニール・ハーストン、アリス・ウォーカーといった作家らの反核思想や原爆表象に注目し、植民地主義や人種問題をテーマとしたアフリカ系アメリカ文学における核のナラティヴの研究にもとりかかりはじめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニューメキシコ州とアリゾナ州への出張が27年度以降に延期になったため、サイモン・J・オーティーズ氏へのインタヴューやアリゾナ州立大学図書館における関連文献の調査と収集を行うことができなかった。しかし、北米先住民作家による核のナラティヴを検証しまとめる作業は、27年度の出版に向けて、おおむね順調に進んでいる。また、原爆や3.11以降のトランスパシフィックな環境問題をテーマとしたアジア系アメリカ文学、植民地主義や人種問題をテーマとしたアフリカ系アメリカ文学における核のナラティヴなど、既存のアメリカ核文学研究において見過ごされてきた分野を開拓する足掛かりを得たことは、大きな収穫であった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、26年度に遂行できなかったオーティーズ氏へのインタヴューやアリゾナ州立大学図書館における関連文献の調査と収集を行う予定である。また、これまで行ってきた北米先住民作家による核のナラティヴの研究をまとめて出版するための準備を行う。さらに、原爆や3.11以降のトランスパシフィックな環境問題をテーマとしたアジア系アメリカ文学や、植民地主義や人種問題をテーマとしたアフリカ系アメリカ文学における核のナラティヴについて、研究成果を学会や国際シンポジウムで発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
26年度、サイモン・J・オーティーズ氏へのインタヴューやアリゾナ州立大学図書館における関連文献の調査と収集を行うためにアリゾナ州に行く予定が、27年度に延期になったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
サイモン・J・オーティーズ氏へのインタヴューと、アリゾナ州立大学図書館における関連文献の調査と収集を行うため、旅費として使用。
|