本研究は、南北戦争前のアメリカ文学(特に、アメリカン・ルネッサンスの文学)の形成において、当時の翻訳理論及び実践が果たした文化的役割に的を絞って行われた。アメリカ合衆国が国家としての同一性を確立してゆく過程において、政治、歴史、科学、哲学、宗教、文学の分野で、多くの著作家が様々な形で翻訳作業に携わっている。しかし、従来の単一言語的なアメリカ文学研究においては翻訳の意義は看過されてきた。本研究は、近年のトランスナショナルな文学研究と翻訳研究で発展してきた批評的方法論を導入し、アメリカ文学の起源を、翻訳を通じた世界の文学や言語の流通過程の中に改めて位置付けた。
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