世界的人口高齢化が進行する今、老いの経験を多角的に、かつ、主体的な視点から理解することの重要性が増している。本研究では、文化テキストにおける老いの表現を分析し、老いの文化的意味、及び、それを規定する価値体系を考察した。具体的には、欧米圏と日本で生産された小説、映画、漫画作品を主な対象として、老いの表現を分析した。特に、認知症と介護のテーマに注目し、表象と介護における倫理的側面について考えつつ、老いや認知症の言説の根底にある、人間主体についての考え方そのものを再検討した。結果として、文化作品が、老い・認知症の言説を再生産するのみならず、それを精査、修正、刷新しうることを示した。
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