研究課題
平成29年度の主な成果として次の3点がある。①_The Scarlet Letter_におけるPearl像を考察し、母と子の関係というテーマからナサニエル・ホーソーンの女性観あるいはフェミニズムに対する態度を考察した。本研究は前年度より継続して行っているものであり、論文投稿後に得られた査読者からのコメントをもとにさらなる考察を加えた(現在、再投稿中である)。②ウィラ・キャザーの_My Antonia_について、世紀転換期に雑誌を中心に流布したアメリカンガール像を参照しながら、登場人物Lena像を分析し、キャザーの「新しい女性」観を考察した。成果をまとめた論文は、"A Portrait of a Self-Made Woman: Lena Lingard in My Antonia"というタイトルで、論文集_Something Complete and Great: The Centennial Study of My Antonia_に収められた(第12章、pp. 247-69)。③イーディス・ウォートンの_The House of Mirth_について、アメリカンガールとして登場するLilyと、もう一人の“girl”であるGertyとの関わりを検討した。それにより、Lilyが異性愛ではなくシスターフッドの中で生きるという選択肢が物語の中に埋め込まれているということを論証し、作品の表に見える異性愛プロットがいかに不安定になっているかという点を明らかにした。成果をまとめた論文は『武蔵大学人文学会雑誌』に掲載された。なお、平成29年11月以降平成30年3月31日までの期間は、産前産後休暇および育児休業により研究を中断した。
2: おおむね順調に進展している
世紀転換期の作家であるウィラ・キャザーおよびイーディス・ウォートンの作品について、書籍、論文という形でこれまでの研究の成果を発表することができた。また、ナサニエル・ホーソーンの作品についても、論文原稿の修正を重ね、さらに考察を深めることができた。
育児休業より復帰した後、基本的に研究計画に沿って研究を進める予定である。ただ、これまでの研究においてホーソーンのアメリカンガール像について興味深い考察を得られているため、今後もホーソーンの作品を中心に研究を進めていきたいと考えている。その上で、当初の計画通り、ヘンリー・ジェイムズをはじめとする世紀転換期の作家の作品におけるアメリカンガール像についても研究を進めていく予定である。
平成29年11月以降産前産後休暇・育児休業の取得に伴い研究を中断したため、未使用額が生じた。未使用額は、研究再開後、資料調査のための渡航費用や資料購入などに使用する予定である。
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『武蔵大学人文学会雑誌』
巻: 第49巻第2号 ページ: 63-83