アルヌール・グレバン作『受難の聖史劇』の複数の写本を転写してそれらに見られる孤立詩行や本文の異同などを検討し、各写本の作品伝承上の位置づけや相互の関係について考察を行った。その結果、とくにG写本の作品伝承上の特権的な位置づけを明らかにすることができた。さらに同作品と『アラス受難劇』を比較し、前者における韻の洗練を明らかにした。これらの成果は日本・フランスの諸大学において発表され、多くの中世・16世紀文学・演劇研究者からの意見を得た。また副次的に中世テクストの日本語訳に関する諸問題についての問題設定を行った。加えてフランスの二名の中世研究者の講演会を企画し、日仏の研究者間の交流を促進した。
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