本課題では、これまでほとんど注目されることのなかった第二次大戦下フランスのシュルレアリスムグループ、「ペンを持つ手」の活動について研究を行った。ペンを持つ手の機関誌やグループに関わった若い詩人らの回想録などの収集・分析を通じ、その活動の詳しい様子を明らかにした上で、このグループをシュルレアリスム史及び第二次大戦後前衛再編の流れの中に位置づけた。ペンを持つ手グループが、戦時下において、ブルトンを中心とするシュルレアリスムとは異なる問題意識を持たざるを得ず、そのために、コブラ、シチュアショニスムなどの大戦後前衛運動とシュルレアリスムをつなぐ重要な契機となることを示した。
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