最終年度として、ホメロスそして西洋古典における色彩表現の役割についてこれまでの研究を総括すべく、研究発表・論文執筆に従事し、一定の有益な知的貢献をすることができたと考える。 まず、argos を中心に、4月に京都大学研究会で、6月に西洋古典学全国大会にて研究発表。前年度末に気づいた点――色、動き、音――にも着目しながら、白や輝く、はやいを表現する言葉の役割について、詩人の創造性とともに「動き」という視点の重要性、現代の色彩感覚との連関性を提示した。多数の複合語(arguroelos や argurodines 等)が存在するため、説得的に議論を展開し論証するには他の関連用語との比較検証が必須であり今後の課題とした。 その後、明るい色合いを示す他の色彩修飾語(leirioeis、enages、marmareos 等)の調査に着手。これらの表現を整理し考察した結果の一部を、夏季にハンガリーのセゲド大学にて、春季に英国リヴァプール大学とエディンバラ大学にて発表。色彩表現の重要性を論じ、男女間での色彩表現の使い分けが見られることから、古代における色彩感覚にも言及。さらに、受容研究の流れを受けて、ホメロスの作品を映画のように捉えて論じる文献も多数(Hesk (2015) 等)刊行され、それらの精査を試み、色彩修飾語が使用されている文脈から「動き」と「音」について考察。 暗い色合いの色彩表現については、論文 'The Uncertain World of Darkness in the Iliad' が国際誌 (Thinking Colours) に掲載された。 今年度の成果の一部をまとめたものを国際誌 (Acta Antiqua) に提出・受理済。また、国際誌 (RICERCHE A CONFRONTO) にも論文が記載される予定。執筆中の研究成果もあり、今後発表する予定。
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