本研究計画『明清における文学と経学の相関をめぐって-朱鶴齢の基礎的研究-』では、その主要な研究目的として、王朝交代という歴史的変動期である明末清初における文人たちの文学的創作活動と、彼らの間でおこなわれた交遊が、当時の経学研究に及ぼした影響について解明することを挙げた。 本年度の研究について、まず、前年度の研究成果を踏まえた上で、『愚庵小集』および『詩経通義』に関する資料調査と研究は継続し、また新たに『読左日鈔』の資料調査と検討を試みた。これらは研究課題として挙げた(A)朱鶴齢の代表的著作の校訂・整理、および(C)朱鶴齢の経学関連著作の分析、の二点についての達成を目指すためのものであり、国内外で資料を集めながら調査と検討を続けた。 如上の資料調査・検討から得られた成果について、その一部を、「朱鶴齢に關する基礎的研究(二)-その著作と交遊について-」として発表した。当該の論文では、朱鶴齢の交遊関係について、『愚庵小集』の検討を中心に整理を加えた後、特に顧炎武と陳啓源との関係性について、『詩経通義』『読左日鈔』および『尚書俾伝』の調査から判明した知見とともに幾分かの考察を試みた。これは、研究課題として挙げた(B)朱鶴齢の学術的交遊関係の整理、の達成を目指すためのものである。また、『読左日鈔』の整理と考察から得られた知見の一部を、本研究計画から派生した研究成果として、「「礼」小識」として発表した。
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