中国の古典白話小説について、小説本文に対する批評が次世代の小説創作に対して与えた影響を考察した。まず、自らも小説執筆を志したが挫折し、創作の代わりに『金瓶梅』に対して詳細な批評を施した清・張竹坡について、先行する金聖歎の『水滸伝』批評と比較して批評史上における位置づけを論じ、またその「批評第一奇書金瓶梅読法」を翻訳紹介した。研究期間後半には『金瓶梅』本文の訳注つき新訳に着手した。旧訳以降の研究の蓄積を活用して、正確な本文の翻訳に努めると同時に、訳注において明・清の興味深い批評を訳出することにより、大きな影響力を持ったこの小説がどのように読まれてきたのかも紹介した。
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