本研究では、日本、中国に現存する『詩経』図解を調査し、その変遷や編纂背景を分析した。この結果、現存する早期の『詩経』図解である南宋の「毛詩正変指南図」は南宋、元代を通じて学者や書店により改編され、これらが明代以降の『詩経』勅撰書に取り込まれ他の図解の基礎となっていたこと、明代中期以降、『詩経』解釈の変化や科挙の影響、書店の活動により勅撰書の図解の改編や、新たな図解の編纂が行われたこと、中国では『詩経』の動植物を図示した図解が清代乾隆年間にようやく編纂され、日本の図解としては、岡元鳳『毛詩品物図考』がほぼ唯一中国に影響を与えた日本の図解であることを明らかにした。
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