研究課題/領域番号 |
25770142
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 晋 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40568680)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重畳形式 / 複畳形式 / 中国語 / 描写性 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、昨年度に引き続き、AABBの形をとる複畳形式についての調査を進め、その中でとくに体詞から構成されるAABBの意味と機能について詳細な記述と分析をおこなった。本年度中の研究で得られた成果は次のとおりである。 1.体詞からなるAABBの代表的成員について個別に分析をおこない、それぞれの意味や統語的特徴を記述した。従来の研究では、AABB形式は一般に強い描写性を備えており、連用修飾語として用いられやすいことが指摘されていたが、実際には、描写性の強さや連用修飾語としての適性は、個々の成員ごとに程度が異なることが本研究によって明らかになった。 2.昨年度、体詞AABBの述語用法について調査をおこない、これらの述語が表わす意味が実は「複数性」に由来する「遍満状態」であることを指摘したが、いくつかの例外的成員についての説明が不十分であった。本年度は、昨年度の結論を踏まえたうえで、「複数性の喪失の度合い」という観点から例外的成員の存在を説明することを試みた。 3.これまでの研究で述べてきた動詞AABBの状態化と体詞AABBの状態化の間に、いくつかの意味的な共通性が見られることを指摘した。すなわち、両AABBはいずれもそれらの分布領域に対する描写となること、ともにマイナスの感情色彩を伴いやすいことである。その上で、AABBにおける状態化現象が実は「複数性の喪失」という同一の意味的動機に基づいて発生しているという可能性を指摘した。 4.口語コーパスの作成に取り掛かり、中国漫才「相声」の台本の電子データ化をおこなった。このうちの一部にデータ処理を施し、簡易コーパスとして利用できる形に改めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AABB形式に関する研究は、これまで動詞AABB、体詞AABBの分析を中心に進めてきたが、それぞれにおいて、これまでに見過ごされてきた問題を発掘、解決することができた。現在は、これらと形容詞AABBの意味的なつながりを明らかにできそうな段階にまで至っており、研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、まず体詞AABB形式についての昨年度までの調査結果を基礎として、とくに体詞AABB形式の連用修飾語用法についてさらに詳しい記述をおこないたいと考えている。それを通して、体詞AABBがどのような意味において副詞AABBと接近するのか、個々の成員によって連用修飾語のなりやすさが異なるのはなぜか、といった点を明らかにすることを目標とする。また、これと並行して、口語資料の電子コーパス作成を急ぐことも本年度の重要な課題である。まだ十分な量のデータ加工が終わっていないので、作業をいっそう加速させ、これまでの研究で得られた成果が口語資料にも適応できるのか、早急に検証しなくてはならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会に参加するための旅費を、全額分予算に組み入れていたが、学会から航空券代金の支払いがあり、未使用額が生じた。また、簡易コーパス作成作業の協力のために、大学院生2名を短期雇用する予定であったが、2名ともが事業期間中に職を得て離籍した上、代わりの院生を探すのにも時間がかかった。このため作業が大幅に遅れ、短期雇用の経費に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額のうち約50,000円程度を研究成果発表のための10月下旬の中国出張に使用し、残る約60,000円はコーパス作成作業補助のための短期雇用に充てる予定である。雇用をお願いする大学院生2名はすでに確定済みである。
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