平成27年度は、引き続きAABBの形をとる複畳形式を中心に調査をおこなったほか、疑問詞連鎖構文という新たな課題についても基礎的な調査をおこなった。本年度の研究で得られた成果は以下のとおりである。 1.体詞AABBの述語用法について、引き続き調査を行い、昨年度明らかにした「遍満性」に基づく意味変化プロセスに加え、新たに「換喩(メトニミー)」に基づく意味変化プロセスが存在することを明らかにした。すなわち、“風風火火”を例にとれば、「風と火が同時に存在する状況」はしばしば「風に煽られて火が勢いを増す」という結果をもたらすものであるが、日常で繰り返し観察されるこうした因果関係の近接性が契機となって、「勢いがあるさま」という派生的な意味が生じているのである。 2.動詞AABBと体詞AABBについて統一的な観点から整理をおこなった結果、いずれの形式においても「遍満性」と「換喩(メトニミー)」を契機とする2種類の意味変化が存在することが明らかになった。 3.複畳形式と関連性の高い表現形式として、疑問詞連鎖構文を取り上げ、コーパスに基づく基礎的調査をおこなった。その結果、当該構文は、口語においては、意思表明や命令、警告に用いられることが多く、こうした機能が構文の核心的意味と深い関わりを有している可能性を指摘した。 4.昨年度に続き、中国漫才「相声」の電子データ化を進め、口語コーパスの構築を進めた。本年度電子化した部分についても、データ処理を施し、簡易コーパスとして利用できる形に改めた。
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