本研究は,一般にチャガ(Chaga)語群と呼ばれるキリマンジャロ・バントゥ諸語(Kilimanjaro Bantu languages)を対象として, 1) いくつかの言語の文法記述調査と,2) そこから得られた資料にもとづくKB内部の構造レベルの類型的多様性に関する分析,の二点を目的とするものであった.この枠組みのなかで計3回の現地調査を行い,それによってほぼ当初計画どおりの成果を得ることができた.最も顕著な成果を上記目的に沿う形で挙げれば,1) に関しては,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所における言語研修「チャガ=ロンボ語」の開催と,その成果としての文法書(『チャガ=ロンボ語(Bantu E623)文法スケッチ』)および語彙集(『チャガ=ロンボ語(Bantu E623)基礎語彙集』)の刊行,2) に関しては,2015年に京都で開催された第8回世界アフリカ言語学国際会議(The 8th World Congress of African Linguistics)における,本研究枠組みでの成果をまとめた発表(A tentative analysis on typological microvariation in Kilimanjaro Bantu)があげられる.後者に関しては,発表をとおしたコミュニケーションによって,国際連携研究への参加の機会を得るなど,今後の展開という点でも有意義な成果を得ることとなった.
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