最終年度は山形県山形市,天童市,熊本県天草市,八代市において追加調査を実施した。山形市,天童市では有声阻害音の重子音(以下,有声促音)がいわゆる動詞の進行形,及びモダリティ表現において出現することを確認し,録音を行った。天草方言においては語根融合(二字漢語(例:実行,角度)や数詞+助数詞(例:一匹,八回))において有声促音が出現することを確認し,分布を調べ録音を行った。八代市では,若年層を対象に副詞節(例:食べるだけ)や名詞節(例:捨てるゴミ)などで有声促音が出現するかを調査し,同時に調音時の声帯振動の計測と有声性の聴覚調査を実施した。 研究期間全体を通じて,有声促音の地域的分布,および音響音声学的実態については明らかになってきたと言える。また,他の研究者とのワークショップ開催によって,理論的位置づけや地理的分布の詳細,音声研究上の問題点なども明らかになってきた。その一方で,音響と聴覚の関係,ならびに地理的分布の理論的な説明(最適性理論ならば,制約そのものが異なるのか,順序づけが異なるのかなど)が明らかになったとは言えない。これらの点は将来の課題である。 以上の成果は学術大会(個人発表,ワークショップ),学術誌を中心に発表を行っている。また,最終年度の成果の一部は日本言語学会での発表が決定しており,また,日本音声学会の学術雑誌『音声研究』において本研究テーマと関連する特集号が企画されており,代表者も編集に携わることになっている。
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