研究課題/領域番号 |
25770160
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
ウンサーシュッツ ジャンカーラ 立正大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70632595)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 名付け / 命名 / ジェンダー / 漢字 / 価値観 / 若者問題 / 社会言語学 / 人類学 |
研究実績の概要 |
今年度は、下記の点を中心に収集したデータを分析し、研究を進めてきた。 1.近年では「子」の付く女性名が激減していることが最も注目されている名付け習慣の一つである。このことより、近年の名前の特徴に関する理解を深めるため、女性名と男性名における差に着目した。歴史的データを分析した結果、過去では男性名の方が女性名よりも多様だったのに、近年女性名も同様に多様になってきており、むしろ男性名よりも変化の幅が大きいことが明らかになった。だが、女性名と男性名の共通点が少ないことから、中性的な名前が増加している仮説が支持されなかった。 2.読みにくい名前がいかに受け止められているのかを解明するために、「キラキラネーム」「DQNネーム」という用語がいつごろ出たかに焦点を当てつつ、新聞やその他のメディアにおける読みにくい名前に取り巻く言説を質的に分析した。その結果として、新しい名前に対する批判が曖昧なものであり、決まった基準がなく、流行がいかに始まる・普及するかという理解に欠いたものが多いことが明らかになった。 3.新しい名前に対する批判の中に、名付ける親が、それらを読まないといけない周りの人々の負担を考慮していないという主張が多い。そこで、実際に誰が名付けに参加するのかを明らかにするために、(1)広報誌における名前の由来に関するメッセージおよび(2)掲示板等に見られる名付けへの助言を求めるポストを調査し、分析した。その結果として、主に核家族内で名付けが決まることが示唆されたが、名付けの際に祖父母の意見が絶対に拒否されるよりも、「干渉」という形でなければ、受け入れてもよいという姿勢を取る親が多く、名付けを通して絆を作る人も多い。 4.引き続き、広報誌に見られる名前のデータを抽出し、新しい名前の表記的・音声的特徴の分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、訓練を受ければ新しい名前が読みやすくなるのかというトレーニングの本調査を実施する予定であったが、以前実施した調査の結果を詳しく分析した結果として、調査のやり方を見直す必要があることが分かった。このことから、平成27年度中は調査の方法を再検討するのに時間がかかり、結果的に本調査を平成28年度実施することになった。また、インタビューを通して、どのような動機が名付けを決定するのかを研究する予定であった。当初は子どもが近日生まれた家庭を対象にするつもりだったが、インタビューに必要な時間を自由にできる協力者を確保するのが困難だったため、インタビュー調査のやり方も見直す必要があると判断されたのである。最後に、対象した広報誌の中に、名前に関するコラムを中止したものもあるため、広報誌からのデータ収集の見直しも必要となった。上記の諸事情の関係で、平成27年度の実施計画が当初の予定より遅れた結果となった。 なお、インタビュー調査を補助するデータとして、すでに広報誌に見られるメッセージを分析する調査を始めており、インタビューに代わる有効な方法であることが示されている。また、データを見直しをしつつ、関連調査として女性名と男性名の比較、メディア等での新しい名前の取り上げ方に関する調査が実行でき、引き続き広報誌の調査を進めたため、新しい名前に取り巻く言説および他の現象との関係性、新しい名前の特徴がより明確になってきたことから、遅れながらも、読みにくい名前がなぜ増えているのかという問いを解明するのに近くなってきた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度実施する予定だった本調査を実施し、読みにくい名前のトレーニングの本調査を実施し、データの分析をする予定である。また、面接の対象者の確保が難しかったため、インタビュー調査のやり方を見直し、他の方法で名付けの動機を明らかにする調査を実施する予定である。具体的に、被験者の負担を減らすためにアンケート調査等に切り替えることを検討しており、現在は調査票を新しく作成している最中である。また、引き続き広報誌のデータを収集し、近年の名前の特徴の解明に努める予定である。対象情報が中止になった広報誌の問題で、過去に遡るデータを対象に追加することにすることで、対応する予定である。 さらに、計画のまとめに向け、収集したデータの分析に努める予定である。現在は、ジェンダーという観点から新しい名前の分析をさらに発展させており、5月中に国際学会・Gender & Languageで、「キラキラネーム」の性別分布について発表することが決定されている。また、名付け習慣における変化が全国的に見られるのかを明かにするという目的もあるが、これについては分析が進行中であり、このテーマについて8月に国際学会・Nordic Association of Japanese and Korean Studiesで発表することも決定されている。最後に、近年の名前に取り巻く言説および名付け習慣を通してみる家族関係に関する発表を論文にまとめ、報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況で詳述したように、平成27年度は、調査のやり方の見直しで、トレーニング調査およびインタビュー調査の実施方法を再検討し、改めて平成28年度に実施することになったのである。元々平成27年度は、トレーニング調査への協力の謝礼および、インタビュー調査のデータの書き起こしで使用するつもりだった助成金は、その関係で次年度使用額が生じたのである。なお、平成28年度は、これらの二つを実施する予定であるため、データ入力・書き起こし、謝礼などで使用する見込みである。
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次年度使用額の使用計画 |
謝礼 1人1,000円×100人 = 100,000円 人件費(書き起こし、データ入力等) = 1か月10時間×11か月×1000円 = 110,000円 ネット調査に対する費用 1件×500,000円
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