平成29年度は、主に3つの課題に取り組んだ。第一に、前年度に引き続き、広報誌からのデータ収集と分析を進め、名前情報のデータベースを拡張させた。第二に、名付けの動向とそれにおける変遷を把握すべく、名付けの際に重視した要因をはかったインターネット調査を実施した。現在その分析を行っているが、名付けにおける地域差・年齢差が明瞭になる見込みである。第三に、発表に向け、これまでに収集したデータの分析も進展させた。 また、研究のまとめにも努め、学会発表を3回(国際学会1回、国内学会2回)行った。その成果を論文という形でも公表し、平成29年度中に論文が2本刊行された。1本目においては、本研究課題の重点であった、広報誌を命名学のために用いる可能性を考察した上、広報誌における名前情報に関する調査の概要と結果を述べ、近年の名付けにおける変遷を観察するのに十分であることを証明した。2本目においては、近年の変わった名付け習慣に対する否定的な評価においてしばしば出現する「常識に欠けている」「非常識だ」という批判がいかに機能するのかを究明すべく、「常識」がなぜキーワードになっているのかを考察した。結果的に、「常識」への訴えが価値観の構築・交渉において重要なストラテジーとして機能することを示した。 上記の他に、さらに論文が2本受理され、平成30年度中に刊行される予定である。1本目は、査読付きの国際誌であり、日本在住の外国人の名付け事情を考察したものである。2本目は、電子コミュニケーションにおける正当化ストラテジーに関する共著書籍の一章であり、名付けとも関連している価値観の交渉について執筆した(論文投稿と査読により執筆者として採用)。 なお、現時点では、成果をさらに公表できるように、原稿を3本用意している途中であり、平成30年度中に投稿する予定である。
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