研究概要 |
本研究は1)臨地調査と、2)データ整理・解釈に分かれる。 1)については、短期の臨地調査を3度行い、雲南省香格里拉県および維西県において合計5種のカムチベット語方言(Choswateng, Myigzur, Phuri, Gagatang, sKobsteng)の語彙・文法調査を行った。また、次年度の調査に向けて、村落の選定を行うための基礎情報を収集した。また、村落に伝わる宗教文献も収集し、それにまつわる村民の歴史を口頭で語ってもらい、言語資料として供するだけでなく、移民の年代・状況などを把握する史料的価値のあるものを収集できた。 2)については、まず収集した言語データは電子的にデータベース化し、検索可能な電子的資料を作成した。次に、言語地図を作製するベースとして、フリーソフトMANDARAおよびGoogle Mapsの性能比較を逐次行い、その機能性から、当初予定していた前者ではなく、後者をベースとすることに決定した。また、作成した言語地図を解釈する方法を検討し、語彙形式の多様性に富む語、少数の特定の語彙形式が用いられる語、音韻対応のみが問題になる語、と種別を分けて解釈を加える見通しが立った。 以上の成果に基づいて、論文を4件発表し、口頭発表を3件行った。口頭発表の際には、参加者との交流において、地理言語学の方法論を検討する機会を持つことができ、本研究を推進するために役立った。また、研究最終年度末に予定している単著の執筆について、基本計画を立てた。
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