研究課題/領域番号 |
25770167
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
鈴木 博之 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (10593006)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チベット語 / 方言学 / 地理言語学 / フィールドワーク / 言語接触 / 中華人民共和国 |
研究実績の概要 |
本研究は、1)臨地調査と2)データ整理及びその解釈に分かれる。 1)については、短期の臨地調査を2度行い、雲南省迪慶州を中心に、新規調査として合計43地点(翁上、申科頂、霞給、魯堆、居佳、左魯、亞浪、打撲貢、開香、茨ka通、貴崗、南哈、下龍農、湯堆、孜尼、吉沙、祖莫頂、和平宗巴、果念、爭茸、霧濃頂、江坡、巴美、紅坡、久農頂、直仁、茨中、雨崩、巴東、吉仁葉古、吉仁水、澤通、規吾、葉日、塘批、翁水、木魯、習克、乃思、色倉、新陽、湯滿、西當)のカムチベット語方言の語彙(1000-2000語)を収集・記録した。また、香格里拉維西県、徳欽県では地元の歴史を記録したチベット語文献を収集し、当地の寺院と村落に関する歴史資料を収集した。加えて、同地域の口頭による歴史の語りも収集し、村落の形成の歴史、居住の歴史などを記録した。 2)については、まず収集した語彙データは電子的にデータベース化し、検索可能な電子的資料とした。次に、言語地図を作成するベースとして、Googlemapsの地点情報に基づいて、オンライン地図作成ソフトであるArcGIS onlineで処理できるデータベースを主とし、ktgisのgeocodingで処理できるデータベースを副とする形式にデータを加工、編集した。この作業は言語地図作成とともにその解釈が反映され、データの編集そのものが研究成果となるため、試行錯誤を繰り返し、語彙を対象とする20枚、および音声を対象とする20枚の言語地図を作製した。 以上の成果に基づいて、論文については本研究に直接的にかかわるものを15件、副次的成果として11件発表し、各種学会・研究集会において口頭発表を5件行った。また、3度の招待講演において、研究成果に直結する話題を提供した。また、本研究の成果の一部を含む単著を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
27年度の現地調査においては、雲南省民族学会蔵族研究委員会からの全面的な研究支援を得ることができ、計画以上の地点の方言資料を収集することができた。これにより、雲南省内のチベット語方言地点数は100を超え、当初の計画を大幅に上回る密度となった。また、同委員会からは本研究の成果を含む単著の出版の便宜を図ってもらえ、当初本研究の計画にはなかった中国での単著の出版が可能となった。 加えて、27年度より東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で始まった共同研究「アジア地理言語学研究」プロジェクトに参加し、アジア地域全体の地理言語学的研究の成果を共有することができるようになり、本研究の成果について他の専門家と情報交換することができ、さらによい地図作成と解釈の方法を学ぶことができる環境が構築された。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は本研究課題の最終年度である。これまでの研究成果のまとめを中心に行うが、成果全体を見直し、資料の特に不足する点について集中的な補充調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費は精算払いで、事前に金額が確定しておらず、あらかじめ思い描いていた計算とずれが生じ、使用しづらい少額の予算が残ってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費の一部として使用する予定である。
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