オンラインで文を処理している際の脳活動について検討するにあたっては、一般的に事象関連電位 (Event-related potentials: ERPs) が指標として用いられている。本科研では、自発脳波データに時間周波数解析を実施することによって観察が可能となる脳の律動的活動 (oscillatory activity) を指標とすることで、従来の事象関連電位を指標とした研究手法では検討が困難であった文処理過程についても検討が可能となることを示すための研究を実施している。 平成28年度では、「処理エラー」が発生していない場合の文処理過程の内容について検討するにあたって脳の律動的活動を観察することの有用性を実証した。具体的には、処理のある過程で心的表象が二つ以上構築可能な文と一つのみの文とを呈示した際の脳波を比較し、前者のみでアルファ帯域(8-13ヘルツ)で有意に大きな事象関連脱同期 (Event-related desynchronization) が観察された。以上の実験結果をもとに、事象関連電位のみならず、律動的活動もあわせて用いることによって文処理システムの実態により深く迫ることができることを示した。
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