研究課題/領域番号 |
25770169
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
青木 淳 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (00633174)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 言語学 / 発話 / 単語親密度 / 吃音 / 神経科学 / 近赤外分光法(NIRS) / 脳機能 |
研究概要 |
本研究の目的は、小児期の発話における運動前野の役割について明らかにし、吃音児と非吃音児で発話時の運動前野の反応に差があるという仮説を検証することである。成人を対象とした機能的磁気共鳴画像(fMRI)研究において、日本語単語(無意味語)を音読した際に吃音者は非吃音者よりも左の運動前野の賦活が強いことが報告されている。吃音者では発話時において角回とブローカ野の活性が弱く、左運動前野がその機能を代償していると推察される。そこで幼小児においても同様の反応がみられるかどうか検証し、左運動前野の過活動により吃音となるのか、または吃音症状の固定化によって過活動となるのかを明らかにする。しかし、fMRIは身体の拘束性が強く、幼児での計測が困難である。本研究では非侵襲的かつ非拘束で脳機能を計測できる近赤外分光法(NIRS)を使用することで、幼小児期における吃音発症と運動前野との関係を明らかにできると考えられる。 本年度では、先行研究におけるfMRI実験プロトコル(単語発話課題)をNIRS実験用に改変し、成人非吃音者3名について個別に検討した。脳賦活に伴う血液量変化(オキシヘモグロビン([Oxy-Hb])を解析対象)における平均ピーク値を計算して単語種類間(高親密度単語、低親密度単語、無意味単語、持続母音)で差があるかどうか被験者ごとに解析を行った。ブローカ野、運動野/運動前野に近い測定部位の[Oxy-Hb]変化は、発話終了後にピークがみられ、一部の被験者では運動前野において単語種類間でのピークの平均値に統計学的有意差が認められた。これらは、一部、先行研究におけるfMRI実験の結果を支持し、NIRSでもfMRIとほぼ同様の実験を実施できる可能性が考えられた。また、これらの成果はNIRSを使用することで、幼小児期における発話に関する脳機能計測が実施できる可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NIRS実験用の単語発話課題の作成と成人非吃音者数名を対象にその検証を行った。吃音者・非吃音者についてさらにデータを収集し、集団解析を行い、より詳細な成果が出つつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度ではNIRS実験用プロトコルの作成とその検証を行った。現在、非吃音者だけでなく、吃音者についてもデータがある程度そろったことから集団解析を行い、単語種類間(高親密度単語、低親密度単語、無意味単語、持続母音)で脳賦活量および賦活部位について先行研究と整合するか、また、吃音の重症度と脳賦活量との相関について解析し、発話および吃音の脳内メカニズムを明らかにする。さらに、幼小児(非吃音児)を対象に実験を行い、成人と同様のプロトコルで検査可能かどうか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張を含む旅費の実際の費用が見積より少なくて済んだため,その分の予算を繰り越した。また、必要な機材の一部について所属機関の別の研究者から借りることができたことと、脳機能計測データ処理に必要なソフトウェアが新たに生じたためその分の経費を次年度に持ち越すこととした。 平成26年度は脳機能計測およびデータ処理の効率化に必要な計算機類およびソフトウェアを主に購入し、残りは当初の使用計画通り旅費・謝金等に充てる。国内外の学会・研究会に出席し、発話・吃音と脳機能および脳機能計測における最新の情報を入手するとともに、成果の発表を行う。
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