まず法然著「選択本願念仏集」について、親鸞が漢字片仮名交じりで書き下した「選択本願念仏集延書」と比較した。その結果、延書での特徴的な補読例として断定の助動詞「ナリ」を補う例が散見された。一方で少数例ではあるが、漢文には存在する「也」字と対応する箇所が延書では見られない、という現象も見られた。 また観智院本「三宝絵詞」について、公刊されている索引を用いて、和語の自立語と表記の対応関係をサンプル調査した。その結果、一語につき複数漢字表記する語は一割に満たず、特に動詞に多いことを明らかにした。さらに特徴的な同訓異字である語句を取り上げ、どのような要因が表記の差となって表れているのか、検討した。
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