研究課題/領域番号 |
25770180
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
茨木 正志郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30647045)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 定冠詞 / 二重属格 / 名詞後位修飾 |
研究実績の概要 |
今年度は、まず、定冠詞の文法化について、去年度に得られたデータに基づいて研究を行った。去年度まではGelderen (2011)によって提唱されいている素性の経済性(Feature Economy)による言語循環の観点からの説明を試みていたが、この分析には素性の解釈、統語構造上の変化、経済性など関する問題があり、定冠詞の言語変化を適切に捉えることができない。そこで、Hopper and Traugott (2003)での意味の漂白化からの説明を与えた。具体的にここでの漂白化とは、指示詞が、それが持つ[i-deixis]素性によるを失うことを意味しており、素性の消失により、Dem主要部からD主要部へと再分析され、Dem-D移動も消失した。ここでの漂白化は屈折の水平化と言語使用における頻度の増加によるものである。この研究結果は、日本英文学会第86回大会で発表された。また、修正した内容がIVY47巻に掲載済みである。 また、現代英語における二重属格についての研究も行い、茨木 (2012)での名詞後位属格の分析を適用した説明を試みた。具体的には、現代英語の二重属格も古英語同様に二重DP構造を持っており、属格名詞に内在格付与を行った名詞が上位のN主要部まで移動することで派生が収束すると主張した。このような分析によって、二重属格が持つ解釈を適切に捉えることができると結論付けた。この研究成果は北海道教育大学紀要に掲載予定である。 最後に、名詞後位修飾要素に関する研究を、形容詞に焦点を当てて行った。ほとんどの形容詞が古英語では名詞後位に現れることが可能であった。主要部移動分析や句移動分析に問題点があることを指摘し、一部の形容詞が右方移動する可能性を探った。この研究結果は北海道理論言語学研究会第7回大会で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は不定冠詞に関する研究を進める予定であったが、二重属格や名詞後位修飾要素の発達へと研究方向が変わっていった。研究方向は変わったが、二重属格や名詞後位修飾要素等の研究から明らかになった事実は、名詞句構造の解明という本研究課題へ大きく貢献するものである。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、引き続き名詞後位修飾要素、特に形容詞に焦点を当てて研究を進める。現段階分かっていることは、名詞後位修飾の形容詞についてHauman (2010)やFischer (2000, 2001, 2006, 2013)などの先行研究があるが、これらの説明には解釈と統語位置の説明に関して問題が残るようである。史的コーパスを利用して新たにデータを取り、先行研究の問題点を克服できる提案ができるよう研究を進めていく。 また、これまで分かった名詞句内修飾要素の発達より、英語における名詞句の限定システム(Determiner system)に対する提案を行えるよう研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった物品が生産中止となって入手不可能になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
事前に購入予定の物品の在庫を調べ、無い場合にはその代わりに購入するものまで想定しておく。
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