本研究は、ビジネス日本語教育への具体的提言、教育現場への応用を目指すものである。 多文化環境の職場で日本語を用いる際、コミュニケーション上の阻害が生ずる場合があることが指摘されているが、どのようなやりとりによって、何が阻害の要因となっているかについての質的研究は少ない。 このような背景を踏まえ、本研究では、平成27年度までにインタビューおよび接触場面の職場における実際の会話を収集する調査を実施した。インタビューは、平成26年から平成27年の2年間において、日本語を用いて働くビジネス関係者を対象とし、台湾・高雄市およびその周辺地域の企業等5社(11名)、中国・上海市およびその周辺地域の企業等6社(13名)、日本国内の企業等2社(5名)で調査を行った。 平成28年度は、インタビューデータの質的分析を行った。また、実際の会話データについては、研究者間の小規模なデータセッションで発表する等の機会を利用し、分析を進めるとともに、分析手法についての専門的知識を身につけた。最終年度に発表した成果としては、海外調査(台湾、中国)のデータを用いて、職場での日本語使用をどのように捉えているのかを明らかにした論文が1件である。 なお、以上の調査によって得られたデータについては、今後も分析を継続する。インタビューデータに関しては、教育機関で日本語を習得していない、いわゆる自然習得のビジネス関係者3名に焦点を当てた質的分析を行う。会話データに関しては、会議において意見の相違がみられた場面を抽出し、どのような相互行為を経て参加者が問題を解決しているのかを会話分析の手法を用いて記述する。分析を進め、次年度以降、その研究成果を発表していく予定である。
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