研究実績の概要 |
平成27年度は、日本人青年期層の英語で自発的にコミュニケーションを図る意志(L2 WTC)の心理プロセスについて、前年度に開発した記述式質問紙を用いて収集したデータを分析し、13th Asia TEFL International Conferenceで公表した。その発表では、L2 WTCとL2モチベーショナル自己システムを用いた先行研究のレビューから、どのような自己信念が、L2 WTCを引き起こすか・抑制するか、2つの問いを立てた。その問いに答えるために、日本人学生から、自ら進んで英語でコミュニケーションしたい・したくない状況や英語の学習経験についてのデータを収集した。収集したデータは、グラウンデッドセオリー(Strauss & Corbin, 1998)に提示されたカテゴリー化の技法やNVIVO 10を用いて整理した。その結果、先行研究(MacIytre, et al., 2011)の通り、対象者の心理は、同じ会話相手であっても、状況によりコミュニケーションしたい・したくない思いに揺れ動くことが示された。また、記述データを詳しく分析することで、本研究の対象者や文脈に特有な現象も一部、捉えられた。今後は、L2 WTCをコミュニケーションへの接近・回避モチベーションとして広く捉え、その心理プロセスを近年のL2モチベーション研究で用いられる複雑系ダイナミックシステム(CDS)の視点や、CDSの中でも、人と文脈との関係に注目した生態学的発達論の視点から理解していく必要がある。この目標に向けて、L2モチベーションとL2 WTCのインターフェイスを考察した論文を函館英文学55号に投稿し、その論文が掲載された。また、収集したデータの分析と結果の解釈を進め、次年度に計画する研究成果全体の公表に向けて取り組んだ。
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