研究課題
本研究は、眼球運動データをもとに、英語学習者の英文の読解プロセスが直列的であるか、それとも並列的であるかを明らかにするため、読解時のparafoveal-on-foveal 効果(PoF効果;注視が置かれている単語Nの処理時間に、注視が置かれていない後続の単語N+1の特性が及ぼす影響)を検証する。本年度に、昨年度報告した学習者の読解時の知覚範囲に関する論文が掲載された。また、学習者の傍中心窩視による言語処理についてさらなる基礎知見を得るため、gaze-contingent boundary paradigm(Rayner 1975)を利用し実験を行った。その結果、英語学習者が単語Nに注視する際は、傍中心窩視での単語N+1にも注意を向け、単語N+1の処理が促進されたことを確認した。この実験結果と昨年度の他の予備実験の結果は複数の国内・国際会議で発表した。上記の実験結果を踏まえ、本実験では、英語学習者の個人差と実験項目の難易度を考慮し、申請書に記した実験参加者の数と1人あたりの読むテキストの語数を変更し、より多くの読解構成能力テストを実施した。その結果、合計約30万語の眼球運動データを複数の実験を通して収集した。また、Angele et al.(2015)での直列・並列処理の検証に関する指摘を参照に、本実験は corpus-based分析のみならず、要因計画による実験も実施した。分析では、線形混合モデルを利用し、実験参加者の読解力(語彙力や文法能力など)およびテキストの特性(単語の使用頻度や予測度など)とPoF効果との関連を調べた。Corpus-based 分析の結果、単語N+1の使用頻度によるPoF効果を確認した。学習者の読解プロセスが直列的であるか並列的であるかについては、今後、要因計画による実験データの分析を終え次第、研究成果を発表する予定である。
研究成果を論文で発表したらこれまで実験の詳細を webページ http://www.chiyuileung.com/ に公開する予定(現時点では非公開)である。
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Open Journal of Modern Linguistics
巻: 4 ページ: 589-594
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