研究課題/領域番号 |
25770204
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松宮 奈賀子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (70342326)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小学校 / 外国語活動 / 教員養成 / 英語力 / 自信 |
研究概要 |
本研究では,小学校教員を目指す大学生が,外国語活動を担当することに対して抱いている不安を軽減し,指導への自信を高めるための方策として次の2つを行い,その効果を検証することを目的としている。方策1)外国語活動の指導に必要な英語力の育成を目指した「指導者としての英語スピーチ」,方策2)ALT役の外国人英語話者とのティーム・ティーチングによる模擬授業 まず方策1)として,127名の学生が「小学校の教員」であることを意識したスピーチ練習に参加した。ただ単に英語のスピーチを行うのではなく,様々な「足場かけ」の工夫を行いながら,児童が理解できるような英語のスピーチを行うことを求めた。スピーチは4名程度のグループに分かれて行い,タブレット端末を用いて録画し,各グループで録画した映像を振り返る時間を設けた。4回の実践の後,参加者に質問紙調査を行い,英語力の向上に効果があったと感じているか等を調査した。その結果,82.6%の学生が本練習の効果を好意的に捉えていることが分かった。 また,方策2)については,留学生の協力を得て,2名の日本人学生とのティーム・ティーチングによる模擬授業を実施し,34名の学生がこれを見学した。その後,本活動が効果的であったかどうかを質問紙により調査した。その結果,ほぼ全員から今後も継続すべき取り組みとの評価を得た。 これらの結果から,上記の2つの取り組みには,指導に必要な英語力や,英語を使っての授業づくりへの理解を高める可能性があることが示唆されたと考える。しかしながら,スピーチに関する事後調査では,学級担任としての英語力については8割を超える学生が向上したと感じているものの,教壇で英語を話すことへの自信については,「高まった」と回答したのは37.8%にとどまった。そのため,「自信を高める」ための更なる工夫が次年度の研究において必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画に基づき,予定していた調査を実施することができた。 これまでの先行研究から課題と指摘されてきた「指導者の英語力不足」とそれに起因する「指導への不安感」を解消するための方法を探るべく,小学校教員を目指す学生を対象に2つの実践(指導者としての英語スピーチおよび英語母語話者とのティーム・ティーチングによる模擬授業)を行った。その結果,いずれも学生の「捉え」としては効果を感じていることが明らかになった。この点においては,初年度の研究はおおむね予定通りに進展したと考えている。 一方,学生の実際の「指導者としての英語力」が向上したかどうかについては,検証できておらず,この点は今後の課題である。英語を初めて学習する児童が理解できるように英語を用いて話すことは,ただ単に流暢に話すことができればよいわけではない。そのため,スピーチの語数が伸びていることや,複雑な構文が使用されていることを,そのまま「小学生を教える指導者」としての英語力が伸びたと評価することはできず,この評価方法の開発が今後の課題といえる。 また,初年度の実践・調査結果はまだ詳細には分析できておらず,平成26年度前半に分析を完了させ,課題を明らかにしたうえで,後半に平成25年度の追調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画のとおり,2年目である平成26年度には,次のことを行う。(1)平成25年度に実施した質問紙調査の結果分析とその公表,(2)平成25年度に実施した2つの取り組み(指導者としての英語スピーチおよび英語母語話者とのティーム・ティーチングによる模擬授業)の追調査 これに加えて,当初の計画にはなかった調査として「指導者に必要な英語力」を検討するための質問紙調査を小学校教員養成課程を持つ大学を対象に実施したいと考えている。平成25年12月に文部科学省より「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が発表され,教科として一定の英語力育成も視野に入れた教育が将来的に導入されることとなった。これに伴い「指導者に必要な英語力」とはどのようなものであるかを将来の小学校英語教育の在り方を含めて再考する必要があると考えた。そこで,交付申請時には予定していなかったが,現行の外国語活動および教科としての英語教育それぞれにおいて,指導者に求められる英語力を質問紙調査より検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
127名の調査協力者の協力を得て,4回にわたる「小学生に分かるように英語を話すことを意識した,指導者としての英語スピーチ」および,36名の参加者(授業者2名,参観者34名)による「外国人ALTとの模擬授業体験」を実施したが,いずれも開講科目の都合から後期に実施することとなった。そのため,事後アンケート調査の実施が年度末になり,簡単なデータ処理以外は次年度に回すこととなった。そのため,入力にかかる費用等の使用を次年度へと繰り越した。 平成25年度の実施した調査に関する質問紙調査のデータ入力に昨年度からの繰り越し金を使用する計画である。 また,平成25年12月に文部科学省より「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が発表され,教科としての英語教育が将来的に導入されることとなったことに伴い「指導者に必要な英語力」とはどのようなものであるかを将来の小学校英語教育の在り方を含めて再考する必要があると考えている。そこで,交付申請時には予定していなかったが,現行の外国語活動および教科としての英語教育それぞれにおいて,指導者に求められる英語力とはどのようなものであるのかを質問紙調査より検討したい。調査対象は小学校教員養成課程を持つ大学を考えている。本調査は当初計画になかったものであるが,本調査に必要な質問紙作成費用,郵送費用,データ入力費用は,平成26年度の経費の使用割り振りを見直すことにより捻出したいと考えている。
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