研究課題/領域番号 |
25770204
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松宮 奈賀子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (70342326)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小学校 / 外国語活動 / 教員養成 / 英語力 / 自信 / ティーム・ティーチング / 模擬授業 |
研究実績の概要 |
本研究は,小学校教員を目指す大学生が,外国語活動を担当することに対して抱いている不安を軽減し,指導への自信を高めるための方策として,次の2つを実施し,その効果を検証するものである。方策1)外国語活動の指導に必要な英語力の育成を目指した「指導者としての英語スピーチ」練習,方策2)ALT役の外国人英語話者とのティーム・ティーチングによる模擬授業 研究の2年目である26年度には,当初の予定どおり,次の2点を行った。 (1)1年目に行った「指導場面を意識した英語スピーチ練習」の効果を分析した。その結果,学生の中で「一般的な英語力」と「学級担任としての英語力」は別のものとして認識されていること,スピーチ練習が「学級担任としての英語力」の向上に役立つものであると感じることが,負担感をあまり感じることなく取り組めることにつながること,自信の向上にはただ単に学級担任として「どのように」英語を話したら良いかという伝え方の工夫が分かるだけでは不十分で,英語力そのものが向上していると感じることが重要であることが明らかになった。また,必ずしも大多数が「教壇に立って英語を話すことへの自信が向上した(不安が減った)」わけではなかったが,指導への不安の最大の要因として英語力を選択する学生が2012年度に実施した同様の調査と比較して有意に減少した。これらの研究結果を学会発表および論文として公表した。 (2)学生同士による仮想ティーム・ティーチングではなく,英語母語話者とティーム・ティーチング形式の模擬授業を実施し,事前事後の指導への自信や不安を調査した。本調査については,実践を行った科目が後期開講科目であり,収集したデータの分析は未完である。本調査データの分析は3年目(27年度)に実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のとおり,以下の2点を進めることができた。 (1)1年目の調査結果の分析と公表 (2)1年目に特別授業として大きめの講義室で1回のみ実施した「英語母語話者とのティーム・ティーチング体験(模擬授業)」を少人数での模擬授業に組み込み,発展的な追調査の実施。 一方,1年目に実施した「聞き手に児童を想定した,指導者を意識した英語スピーチ」の追調査は以下の理由から実施を見合わせた。1年目の実施時には,学生のスピーチを型にはめることを避けるために,スピーチモデルを示さなかったが,学生の「教壇に立って話すことへの自信向上」のためには,具体的にどのような話し方や視覚情報の提示の仕方を工夫すればよいかの指導が必要であると感じられた。しかしながら,指導者の発話が簡潔で分かりやすい英語を用いてなされ,児童が分かるような声や視覚資料を活用することが望ましいことは分かっていても,それ以上に具体的にどのような方法をとればよいのかは明確には示されていない。そこで,同じ方法での追調査を実施するのではなく,学生に「指導者を意識したスピーチ」に必要な工夫の具体を提示できるよう,そのための情報収集を行うことが先決と考えた。そのため,26年度には,英語のみ(All English)で指導を行っている小学校に協力を依頼し,異なる3学年の授業映像を撮影し,どのような発話時の工夫が見られるかを観察した。また3名の授業者へのインタビュー調査も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり,最終年度には次の2つを実施する。 (1)平成26 年度に実施した調査のデータ分析とその結果公表 (2)外国語活動を指導することへの不安軽減・自信向上のための活動を用いた,教員養成 課程における外国語活動指導法授業の提案 また,当初の計画に加え,26年度に追加的に実施した「指導者としての発話の工夫」を探る調査研究を実施する。具体的には,26年度に授業映像を提供していただいた小学校の英語授業における指導者の発話および発話に伴う情報提供の工夫を分析し,どのような「話し方の工夫」をすればよいか,という学生にとって有益な情報を得たいと考える。この指導者の実際の教室での発話の分析から得た情報も含めて,上記の(2)の提案につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国人英語話者の協力を得て,より実際に近い形でのALTとの模擬授業を実施したが,その実施を26年度後期に開講される授業科目内で行ったため,事後調査のデータ保存(紙面データのスキャン等)やデータ入力を年度内に実施することができず,次年度(最終年度である27年度)に回すこととなった。そのため,当初の予算より少ない執行となり,データ処理にかかる費用を次年度へと繰り越した。 また,初年度に実施した「指導者を意識した英語スピーチ」をそのままの形で追調査するのではなく,スピーチの際に活用すべき工夫を探る調査へと内容の修正を行ったことに伴い,学生のスピーチ原稿のチェック協力謝金として計上していた予算の執行がなくなった。その分,27年度に上記調査を継続するための経費として使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施した調査のデータ入力,分析に昨年度からの繰越金を使用する。また合わせて,指導者の発話の在り方を探るための調査にかかる謝金・旅費・撮影等に必要な物品費として繰越金を使用する。 上記に加えて,当初の予定どおり,最終年度として,成果公表等に予算を使用する計画である。
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