研究実績の概要 |
本研究計画の中心となる文化的同化法(Fielder, Mitchell, & Triandis, 1971)は、文章の解釈を中心とした異文化認知学習法の1つである。この教育手法は、異文化コミュニケーション研究における帰属理論に基づいており、次の3部構成になっている。(1)ある2つの文化における習慣の違い・誤解・摩擦などの事例を具体的に描写した読み物(2)その事例に対する質問、および、その答えとなる4つまたは5つの異なる解釈(3)異なる解釈に対する解説。文化的同化法の教育目的は、学習者がこの読み物の分析を通して、自分の文化とは異なる文化における文化的価値観、態度、信念などに触れ、目標学習文化の人々がある状況をどのように解釈するかを帰納的に学習することである。本研究計画では、文化的同化法を応用した英語教育モデル(Ishii, 2009)の基礎的研究を完成し、異文化コンピテンス育成手法として教育現場への応用実践に展開するための基盤となる研究を行っている。本研究では以下のことを明らかにすることを目的とした。 1.英語学習者の異文化コンピテンス育成の効果的な介入手続きと教授内容 2.異文化学習方略や一般的な対人コミュニケーション方略など他の学習者要因への影響 3.開発したモデルの長期的介入による教育効果と教育現場への応用実践の可能性 最終年度である本年度は、上記の1と2に関する研究を継続して行った。1と2の研究成果をもとに、3の長期的介入による教育効果の検証のための準備作業を行い大学生向けの異文化教育を取り入れた英語教育プログラムを開発した。2018年度4月より開発したプログラムの実践的介入を開始している。
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