本研究の目的はクリティカル・リーディングの教授法を開発し、英語教材を開発するための示唆を得ることである。3年計画の最終年度にあたる平成27年度は次の4点を行った。(1)既に作成済みの「クリティカル・リーディングのための発問チェックリスト」を「クリティカル・リーディングの枠組み」と変更し、この枠組みを、テクストの「書き手」、「読者としての自分」、「その他の読み手」の3つの視点から、テクストを根拠に解釈する「テクスト的解釈」と社会・文化的背景とテクストを関連づける「社会文化的解釈」の2通りの解釈を促すキー・クエスチョンで構成した。(2)この枠組みを基に中学校英語検定教科書のリーディング教材の発問を作り、信州大学教育学部附属長野中学校教育研究会のワークショップと長野県英語教育研修会全県大会の講演会でクリティカル・リーディングの理論と発問づくりの方法について説明した。(3)さらに、中学校の現職英語教員2名にクリティカル・リーディングの枠組みを使用してリーディングの授業を行ってもらったところ、テクストの内容理解にとどまらない、行間を読む行為や書き手と生徒自身の文化的、歴史的背景について考えながらテクストで使用されている表現を吟味する生徒の姿が見られた。その一方で、英単語の意味や文法の理解に困難を抱える生徒は、批判的に読むという行為に至るまでに時間がかかり、適宜、丁寧な支援が必要であることもわかった。(4)その他に、British Association for Applied Linguisticsの研究大会で口頭発表を行い、国内外の研究者と研究成果を共有した。
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