研究実績の概要 |
本研究は、多読を行う英語学習者が、多読に対してどのような態度を有し、いかなる要因が多読に影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。そのために、母語の読書態度の研究成果(van Schooten & de Glopper, 2002)を参考に、Ajzen(1991)の計画的行動理論に基づき、多読に対する態度を、認知的態度、感情的態度、主観的規範、行動統制感、意図の5つの概念で捉え、それらがいかなる因子構造を有するかを調べ、多読との関係を調査した。さらに多読行動モデルを構築し、態度と多読との因果関係を検証した。 その結果、認知的態度は「意欲知的、読解力、実利」、感情的態度は「愛好、不安、心地よさ、煩わしさ」、主観的規範は「規範的信念、他者期待」、行動統制感は「英語力、時間、資質、教師支援、授業外」、意図は「独行、関わり」の因子を有することがわかった。多読との関連については、感情的態度の愛好、煩わしさ、行動統制感の資質、意図の独行、関わりの5つが、読語数と読書時間いずれとも、感情的態度の不安、心地よさ、行動統制感の英語力は読語数とのみ、主観的規範の規範は読書時間とのみ、有意な相関関係があった。 多読行動モデルについては、読書時間を行動指標とし認知的態度と感情的態度を態度として1つにまとめるというAjzen(1991)本来の計画的行動理論モデルを基にしたモデルが最良であることが実証され、「態度(認知・感情的)」⇒「意図」⇒「多読(読書時間)」というパスが最も強く多読(読書時間)を説明することが明らかになった。 以上の結果から、教師が、「多読は楽しい・役立つ」と学習者が感じられるように、段階に応じた適切なレベルの興味深い図書を提供し、折に触れその効果を伝え、学習者自らが、多読の楽しさ、多読による英語力の向上を実感できる場を提供するように努めることが多読を促進することが示唆された。
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